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中古住宅流通促進(産経新聞11月27日記事より)

2016/11/27

国土交通省が中古住宅の流通促進に向けた後押しを本格化させている。取引に携わる業者がタッグを組んで品質維持に取り組めば補助金などで費用負担を軽減するほか、購入資金を調達しやすくする金融商品の開発も促す。高品質の中古住宅が"商品化"で出回れば、少子高齢化による空き家増加の歯止めとなる可能性があり、官民一体の取り組みが進められている。(佐久間修志)

 ◆リバースモーゲージ

 11月下旬、東京都内で中古住宅販売に携わる宅建業者や不動産鑑定士、金融関係者など約60人が集まり、中古住宅向けの金融商品開発について議論が交わされた。オブザーバーとして国交省の政策担当者も出席。参加者の一人は「中古住宅の価値が評価されれば、安心して買う人が増える」と期待感を示した。

 集まったのは国交省が進める「住宅ストック維持・向上促進事業」の認定団体のメンバーら。工務店や建築士、宅建業者らが連携して協議会を作り、リフォームやインスペクション(住宅診断)、不具合が見つかった場合に補償する瑕疵(かし)保険などを組み合わせ、中古住宅の品質を維持するサービスを開発・普及する。また中古住宅の購入者が購入住宅を担保に資金を調達できるリバースモーゲージなどの金融商品も開発する。

 国交省は認定団体によるサービスの開発・普及に上限2千万円を補助するほか、サービスで品質を維持管理すれば、リフォーム費用として1戸当たり最大100万円を支援する。

 ◆国内シェアは15%

 総務省によると、国内で流通する住宅のうち中古シェアは約15%で、70~90%程度の欧米と比べて低水準だ。中古住宅は割安の一方、地震の多い日本では耐久性が不安視されるほか、木造住宅は築20~25年で市場価値がほぼゼロとなる商慣習があり、購入希望者が二の足を踏む。人口減少で世帯数が縮小すれば、人が住まない空き家となる中古住宅が増え、倒壊などの防災上の危険のほか治安、衛生面での不安も出てくる。

 国交省の事業は中古住宅流通の足かせだった品質への不安払拭に加え、購入後の補償や資産価値の保全をセットにしたもの。さくら事務所の長嶋修不動産コンサルタントは「中古住宅に対する漠然とした不安を解消するメニューがそろっている」と評価する。

 ただ中古住宅の市場拡大には課題もある。事業の協議会に参加する大手ハウスメーカーはごく一部で、金融商品開発もメガバンクではなく地方銀行や信用金庫が中心と広がりは限定的。金融商品開発の前提となる評価基準作りも道半ばで、有志の会合では「地域ごとに評価の傾向が違う」などの意見が出された。

 "商品不足"も課題だ。これまでの資産価値の低評価が尾を引き、住んでいる住宅の品質を維持しようという国民の意識は低い。十分な耐震性能も含めた市場価値のある空き家は現状で全体の15%程度だ。国交省の担当者は「中古住宅市場の拡大には結局、『家は手入れすれば資産になる』という認識の浸透が欠かせない」と、息の長い取り組みが必要としている。

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